楽しくてずっと笑ってた。それは自分だけだったのに。
気付かなくて、ごめんね?
そう言うと蔵馬は罰が悪そうに笑った。
「謝られるとどうしていいか困るんだけど」
「でも楽しくなかったのに付き合ってくれたんでしょ?」
「まったく楽しくなかったわけじゃないんだけど」
「……?」
最初、蔵馬の様子はいつもと変わりなかった。魔界での会議について行って、待ってる間は書庫で時間をつぶしてたし心配かけるようなこともしてない、と思う。
会議が終わって躯ちゃんや幽助くんとご飯食べて、…うん。そこでも普通だった。じゃあどこから?
「だから、に怒ってるとか、そういうんじゃないんだ」
「そう?」
「怒るわけないじゃないか」
優しく笑って抱き寄せられた。
「…うまく誤魔化そうとしてる?」
「そんなことないよ」
笑いながら蔵馬の顔が近付いた。
「ほらやっぱり」
「違うって」
唇が触れる瞬間交わす言葉がこれって、どうかと思う。
やっぱり誤魔化そうとしているのかもしれないなんてキスしながら思った。
やましいことなんかない。誤魔化すことといったら自分の余裕の無さだ。
なおも疑惑の目を向けるから言葉を奪うために何度も唇を重ねながら、自分に呆れた。
誤魔化したい内容が嫉妬だということ、しかも相手が躯だということに、だ。
女友達と仲がいいのを妬くなんてどれだけ心の狭い男だろう。きっとも呆れるに決まっている。
「ねっ…くら…ま?」
途切れ途切れに発する言葉は聞こえない振りをして口付けた。
ああ、どうしようもない。
苦しくて涙が滲んできて、漸く離れた。そのまま蔵馬の肩にもたれる。
「………ずるい」
やっと吐き出せたのは、今のところこれが精一杯。
ずるい。こうしてうやむやにしてしまうんだもの。
あたしの気持ちを知ってか知らずか、多分わかってるんだろうけど静かに笑う肩が揺れる。
「ずるい」
「うん。ごめん」
音を立てて耳に口付けてまた笑う。
「ずるいー!」
「うん」
確信犯だ。
「ずるいよ?が手に入るならなんだってする」
その意味がわからないけど、きっと聞いても教えてはくれないんだ。
「好き」
「え!?」
悔しいから言ってみたりして。
「もずるいよ」
「知りませーん」
「ずるい。可愛く俺の心を弄ぶんだから」
ほら、結局うやむやにされた。
〜〜fin〜〜