数日前から降り出した雪は街を白く染めた。
初めて蔵馬と過ごすクリスマス。記念にと彼は旅行を計画してくれた。
郊外のホテル。夜景と料理が評判だとか。
はそのホテルの一室で外を眺めていた。
楽しい旅行の筈なのに表情は浮かない。
「蔵馬まだかなあ」
ため息をつくと窓が白く曇る。
どんなに綺麗なイルミネーションがあっても一人じゃつまらない。
「いつになったら戻るのよ…」
こつん、窓に額を押し付けた。
部屋に着くまでは二人で楽しかった。観光なんかもしてパンフレット見てははしゃいだ。
蔵馬の携帯に、魔界からの緊急呼び出しがかかるまでは。
こんなことなら一緒に行けば良かったかも、と考えてまたため息。
厄介ごとだと言ってたしあっちにいようがどうせ一人になる。蔵馬の邪魔にはなりたくない。
視界に白が降ってくる。
「また降り出した…」
せっかくのホワイトクリスマスなのにこんなところでくさってるのも勿体無い。
ぱちん。
櫂(オール)を取り出してホテルの屋上に上ってみることにした。
屋上は立ち入り禁止となっていて誰もいない。
街並みも部屋から見るのとは全く違う。
「綺麗……!」
宝石箱を引っくり返したって例えはこれに使っていいんだろうか。
瞬きをするのがもったいなくてずっと目を見開いていた。
「やっと見つけた。捜したよ?」
声とともに体が包まれた。
「……蔵馬?」
「こんな薄着で。冷たくなってるじゃないか」
そういうと更に強く抱きしめられる。
「おかえり」
彼は少し面食らった顔をして、それでもすぐに微笑んだ。
「ただいま。待たせてごめんねお姫様」
「随分待ちました」
「うん。ごめん」
頬を摺り寄せて、眉を寄せる。
「これ以上はだめだ。部屋に帰ろう」
「そんなに寒くないよ?」
「麻痺してるんじゃないか?」
「もうちょっといいでしょ?あっち見て」
指差すほうにはクリスマスツリー。昼間に蔵馬と見てきたものだけどそれは大きくて、てっぺんを見上げるのにも首が痛くなるくらいだった。それが離れたホテルからでもはっきり見える。
「近くだとツリーしか見えないけどこうして離れるとツリーが街に溶け込んでてまた違って見えるよね」
「うん。本当だ。綺麗だね」
「車のライトもなんだかイルミネーションみたいなの」
楽しそうに笑う彼女に笑みがこぼれる。
「綺麗だけど、が風邪引く前に早く部屋に連れて帰りたい」
「もうちょっと」
「もうだめ」
蔵馬はを抱えると歩き始めた。
「ディナーの準備も出来てる頃だし今度は部屋から見よう」
「……もうどこにも行かない?」
やや頬が赤くなっているのは寒さだけじゃなくて。
「行かないよ。邪魔するなって言ってきたから」
「そっか。…ありがと」
はにかんで蔵馬の首にぎゅっと抱きつくの耳にそっと口付けて囁いた。
「楽しいクリスマスを過ごしましょう。俺といつまでも」
は嬉しそうに頷いた。
〜〜fin〜〜