ああもう。どうしたんだろ。
今、すっごくギューッ!!ってしたい。



前を行くのはコンラッド。
不穏な気配を察知して厳しい顔で振り向くが

「なんだ…か。最近変な視線を感じるからそれかと思ったよ」

にっこりと微笑んでこちらへと近付く。

「どうかした?なにか言いたそうだけど」
「なにもない…よ?」
「…どうして疑問系なんです?」


一応は笑ってるけど顔には太字のペンで『正直に話しなさい』って書いてある。

「なんでもないってば」
、俺に隠し事するんですか?するんですね?」
「……怖ッ!脅し!?」
「まさか!大事な姫を脅すなんて。ただ俺に隠し事するなんてどうなるかわかっているのにすごいなって驚いているんです」

聞きたくないけど聞いてしまうのは人の性。

「…すいませんけど……どうなるんですか…?」

コンラッドは笑みを貼りつけたままの腰に手を回す。

「ここじゃなんですし俺の部屋へ行きましょうか」

サ―――…………

の顔からは血の気が引いている。

「やっやだ!冗談だってば〜ははは…話すよ!だからは〜な〜し〜て〜!!」

あからさまに残念そうな顔で腰から手を離す。

「で?」
「あ〜……えっと」
?」
「あの…ね」


目を合わせようとするコンラッドに対しそれを避けるようにそらす
頬は赤く染まっていて……

「…やっぱり部屋へ行きましょう。我慢できません」
「わぁッ!!なっなに言ってんの!!我慢てなんの!?やだよ!!!」

手を引いて歩き出すコンラッドに暴れて抵抗する。

「誘ってるんじゃないんですか?」
「はぁ!?」
「顔も赤いし口籠ってるし、俺に気付いてほしいのかと。違いました?」
「違います!!!」

じゃあなに?とグウェンダルのように眉をひそめて首を捻る。


「ただ…ね…」
「はい」
「……て…したかった…の…」
「は?」
「だからッ…その……って……なった…」
「すいません、よく聞こえない…」
「ギュッてしたくなったんだって言ってるでしょお!!」
「すいません!……え?」

何度も同じ台詞を繰り返し言わされるのに恥ずかしさがピークに達したが叫んだ。
コンラッドも思わず謝ったが内容を理解するとしばらく目を見開いていたがその後は口許に手をあてて少しうつ向いてしまった。

「…なんかコンラッドの背中見るとピョンって飛び付きたくなって、ぎゅうってしたくなる…てどうしたの?」

照れてもうつ向いていたが上目で見ればコンラッドも同じように下を見ている。口を覆って。

呆れてるのかと不安になって黙るにようやくコンラッドが声を出した。

「すいません…なんだか嬉しくて顔が緩んでしまって」


確かにいつものウェラー卿とは違うにやけた顔になっていた。

がそんなふうに思ってくれてるなんて。今まで俺ばかりそんな気持ちだったのかと思っていたから…すごく嬉しい」

コンラッドの頬もいつもよりは赤いようだ。

「う、うん」

初めて見た表情のコンラッドには驚きと恥ずかしさに同時に襲われた。

自分はそんなに喜ばれることを言ったのかと考えもした。

だから気付けなかった。
コンラッドの顔がいつもの黒い笑顔に戻っていることに。

「最近の視線はだった…んですね?」
「た、多分…」
「抱きついて力いっぱい抱きしめてくれていいんですよ?俺の体はあなたのものなんですから」
「は…?」


コンラッドの顔を見上げたはピシッ!と固まった。

そこにいたのは黒い笑みの大魔王。

「さぁどうぞ」

両手を広げて待たれても今は結構です。はそう言いたかった。

自分が素直になれないのもあるが黒コンに飛込むにはあまりにも危険すぎる。

「…仕方ありませんね」

フッと力なく笑ってコンラッドは広げていた腕を下ろした。

いつもならが来なければ自分から抱きしめてくるのだが。

「俺は今から少し用事があって出かけますからまた後で」

そう言って背を向けて歩き出した。

「コンラッド!」

慌てて声をかけるととりあえずは足を止めてくれた。

「…怒ってる?」

その質問に微かな笑いと

「怒ってなんかいませんよ。後でゆっくり話しましょう」

そう言ってはくれたがこちらを振り返ることはなかった。

少しずつ離れていくコンラッドの背中にはここ最近抱えていた欲求が膨らみだす。



ぎゅーってしたい…



コンラッドは後ろからの衝撃に前へ倒れることなく踏み止まった。
背中に感じるのは愛しい温もり。

最初はただ頬を寄せるだけだったのがおずおずと腕を腹部へと回し力を込めて抱きついてきた。

後ろで深呼吸する少女。
前に回した手はコンラッドの服を掴み皺を作る。

「満足?」

の手に自分の手を重ねる。

「…まだ…」

そして更に強く抱きしめる。
強くといっても少女の力。コンラッドには苦しくもなんともないが。

「…ん…もう満足した」

しばらくして彼女の腕から力が緩んだ。
コンラッドが振り向くとはにかんだ笑顔の

「本当に満足ですか?」

耳元で囁くと頭を彼の胸に寄せる。

「俺はまだ足りません。が抱きしめてくれたのは嬉しいけどね」


の体は今度は正面からコンラッドに抱きしめられた。
も嬉しそうにコンラッドの背に腕を回す。

コンラッドは嬉しそうに頭に、耳に、額に…といたるところに口付けるが唇にはけしてしない。

堪りかねては懇願した。

「コンラッド…キスして?」
「そうやっていつでも俺を求めてください。俺を感じてほしい」

頷いてからは背伸びをして、そして初めてコンラッドの唇を奪った。



〜〜fin〜〜