さようなら眞魔国 W


血盟城はいつもより静まりかえっていた。
魔王であるユーリが帰還してから少しだけ活気を取り戻したがやはり沈んでいた。

執務室では羽ペンを持つユーリとコンラッドの二人だけ。
ヴォルフラムは里帰り中でギュンターとグウェンダルは眞王廟へ行っていた。もちろんのことを調べに。


「はぁ〜…」
「どうしました?」

コンラッドが書類をまとめながら微笑んだ。

「…にやにやしちゃってまぁ…」

ユーリが呆れるくらいコンラッドはご機嫌だった。
言っておくががいなくなって一番落ち込んだのは彼だし実際ユーリが帰還した時も無理に作った笑顔だった。
それと比べると今は段違いの笑顔。

「そんなに嬉しかったのか?こっちは言うの恥ずかしかったっていうのに」
「恥ずかしがり屋のからの愛の告白なんてなかなか聞けないんですよ。嬉しいどころじゃないですよ」

そう言って胸ポケットから一本のリボンを取り出す。
ユーリが地球でからコンラッドに渡すように頼まれたリボンとコンラッドへの想い。
それはこっちに来てからすぐ伝えた。


「本当なら…から直接聞きたいんですけどね」


ユーリはリボンに口付けるコンラッドに何も言うことができなかった。

眞王廟へは何度も足を運んだが誰も何の情報も得られなかった。
がこちらの世界に来た時にもウルリーケからは確かな情報が得られていなかった。


今までは―――…











「陛下――!!私はやりましたよ!ウルリーケが口を割りました!」
「なに!?」
「本当か!?」

執務を終えキャッチボールをしていたユーリとコンラッドにギュンターが駆け寄る。

「ええ。ウルリーケも詳しいことは最近知ったそうです」
「それよかはまた戻ってくんのか?」
「あ、はい。姫の魂はこちらの世界のものでした。つまり魔族です」
「だってよコンラッド!」

満面の笑みでコンラッドを振り返ったユーリは彼の驚いたような困ったような何ともいえない表情を見た。

「嬉しくないのか?」
「とんでもない。嬉しいですよ。また会えるんですからね」

だが表情は硬いまま。

「たが、ギュンター?」

探るようにギュンターの目を射るコンラッドに諦めたように微笑んで続けた。


「確かに姫は魔族ですが、お呼びしてはおりません。姫の魂がこちらに必要ではないからです」

コンラッドの片眉が上がる。

「今は、という意味ですよ。怒らないでください」
「じゃあさ、は勝手に来たっていうのか?」
の魂はウルリーケの前任の巫女のものだ」

ギュンターの後ろから現れたグウェンダルの顔は疲労を浮かべていたが何処となくすっきりした表情をしていた。

は知らず魂から前世の魔力を引き出したのかもしれん。その力がこちらへと導いたのかもしれんな。我々以外の何者かの仕業とするには説明がつかん」
「でも、が魔力に気付いてないならこっちから呼ばないといつまでも来ないんじゃないか?」

ユーリの問いにグウェンダルが珍しく口の端を上げてコンラッドに視線を投げた。

「ウルリーケに話はつけている。が来るのを待つほど我々は気が長くはない。姫にはこちらへ来てもらおう」



それで妙にすっきりした顔だったわけだ。











、還っておいで。

みんな待ってる。

あなたに会いたいと待っているよ。

あなたの魂がこちらに必要じゃないなんて言わせない。

今、あなたはこの国に必要なのだから。

グウェンの言葉通り俺たちはに関しては気は短いんだから、いつまでも戻らないつもりなら無理矢理迎えに行くよ?

もちろんたっぷりお仕置きするから覚悟して―――――













愛してます 心から










「ふぇっくしゅ!」
「なに、風邪?」
「かなぁ?寒気がする……」



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