「馬に乗るの初めて!すごく気持ちいいね!」
「そう?喜んでもらえて嬉しいですよ」
コンラッドの愛馬、ノーカンティに二人乗り。
気になるのは後ろからコンラッドに抱きしめられる形になっていること…かな。
「よかった。元気出たみたいで」
「え?」
後ろを振り返ると思ったよりコンラッドの顔が近くにあって慌てて前を向く。
押し殺したような笑い声が聞こえてくるということはあたしの顔は焦って変だったんだろう。
「陛下が帰られてから少しおとなしくなったから心配していたんです」
俺だけじゃなく城中がね
そう言ったコンラッドや心配をかけたんだろうお城のみんなに申し訳ないと思いながらも少しおとなしく…ってどういう意味!?
あたしそんなに騒がしい!?
って思ってしまうのはひねくれ者ですか?
「陛下がいないと寂しいですか?」
ノーカンティの歩みを止め尋ねるコンラッドに何て返事をしたらいいのか迷う。
「有利がいないのはつまんないよ。でもね…」
言っていいんだろうか?
けして眞魔国が嫌いなわけじゃない。
ただ、もしかしたらもう地球には戻れないのかもしれないという不安。
あたしの居場所は地球にはないのかもしれないし眞魔国にもないかもしれない。
今だにこの世界へ来た理由がわからないんだから。
「?」
黙り込んだあたしにコンラッドが心配そうに声をかける。
「有利がいてくれたらなんていうか同郷の仲間って感じで安心するんだよね」
「そうですね」
「ここではみんなよくしてくれるし大好きなんだけど…時々、ホントにたまにね……怖くなるんだ」
「……」
ギュッと抱きしめられる。
「自分でもわかんないの。何に対して怖いって思うのか」
このまま地球に帰れなかったら、家族にも友達にも会えない。
でも逆に地球に戻れたとしても眞魔国にまた来れる保証はない。
こっちの友達をなくすのは嫌だ。
「どっちもとるのはやっぱり欲張りだよねぇ」
「え?」
「なんでもない!」
コンラッドに寄りかかる。
不安定な馬上。
でも彼は絶対に受け止めてくれるから安心して身をまかせられる。
「…恋人に会えなくて辛くはないですか?」
コンラッドが強く抱きしめてくる。
「…どう…だろ…」
彼といっても付き合い出したばかり。
自分から好きになった人ではないけど一緒にいて楽しい人。
好きになったら幸せだろうなって思える人。
それなのにこっちに来てからあたしの心にある彼の場所は………
「コンラッドあっち行きたい!」
いきなりで驚いたコンラッド。
でも勘の鋭い彼のこと。
多分あたしの複雑な気持ちはわかってくれたはず。
何も聞かずノーカンティをあたしの指す方へ進ませる。
「さっきの話は内緒だよ」
「わかってます。俺との秘密ですね」
「できれば忘れてくれると有り難い。弱気なあたしはあたしじゃない」
「そんなところも可愛いですよ」
「あ〜!そういうことサラッと言わないで!!!」
根っからのフェミニストだね。
どうしたらいいのかなんてわからなくて
手探りで進んでるよう。
でも、もしも地球に戻る日が来たら、眞魔国に別れを告げる日が来たら―――…
「離しませんよ」
「…心読めるの…ウェラー卿」
後悔だけはしたくない。
〜〜fin〜〜