今日は暗黒武術会決勝戦。

目覚めるとホテルの部屋で、ぼんやりとベッドに座っていたらドアが開いた。


「おはよう」

「お…はよう?」


部屋は一人部屋のはず。

「朝食きてるよ。顔洗っておいで」

促されてバスルームに向かうけど、ここ…あたしの部屋じゃないよ?
部屋の作りが若干違う。

、タオルここにあるから」

「蔵馬…あの…」


どうやらここは蔵馬の部屋らしい。
どうして自分がここにいるのかわからないけど。

「食べながら話そうか?」

あたしの顔にかいてあったのかな?

蔵馬はそういうと部屋に戻ってしまった。

急いで身支度を整えながら鏡に映る自分にびっくりした。

目が腫れてるッ!

なんてひどい顔!!

溜め息をつきながら
部屋に戻る。

ベランダには朝食が用意されていて、蔵馬がコーヒーを飲んでいた。


「なんか…迷惑かけた?」

おそるおそる問いかけると蔵馬は首を振った。

「覚えてないの?」

「うん。蔵馬と会って泣き出しちゃって…少し話したんだよね」

そこまで言って思い出した。

キ、キス…しちゃったんだっけ…!!


恥ずかしくなってうつ向いたあたしにクスクスと笑いながら

「思い出した?
気付いたら寝てたんだよ。それで俺の部屋に連れてきたんだ」

「そ、そう…なんだ。ごめんなさい」

「なにもしてないから安心して」

な、ななな何言ってるのよ!

その言葉に更に赤くなってしまう。


「わ、わかってるから!」

「そう?ほら早く食べないと冷めるよ」


そんなこと言われても食べれないよ…


結局食事がほとんど喉を通らなかった。

だって昨日のこと何度も思い出しちゃって…

食後、少し時間にも余裕があるからと蔵馬と散歩に出かけた。


「気持ちいいね。今日が決勝だなんて信じられないくらい」

決勝戦は生きるか死ぬかの戦いになるだろう。
その朝がこんなに穏やかなものだと不思議な気分になってくる。


「蔵馬もみんなも無事でいてくれたらいいな」

「そうなるよう頑張るよ」

きっと凄まじい戦いが繰り広げられる。

あたしは見ていられるかしら?

急に立ち止まったあたしを振り返る蔵馬。


「どうした?

「戦うのは蔵馬たちだってわかってるけど、怖いよ。…頑張って生きてね」

ふわっと蔵馬の香りを近くに感じたと思ったらあたしは蔵馬に抱きしめられていた。

「蔵馬…?」

「…生きるよ俺たちは」

「あ…あの」

突然のことでパニックになる。

「あ…ごめん」


蔵馬はそう言って離れるけど瞳はあたしから外すことはなくて、なんだかこそばゆい感じがする。


「俺、頑張るよ」

「うん。頑張って!あたしいっぱい応援するからね!」


一生懸命に笑顔をつくるあたしを見つめる蔵馬はしばらく何かを考えるように黙っていた。

「どうかした?」


蔵馬の目の前に手をかざしてみる。

「あのさ」

「ん?」


少し硬くなった表情。

蔵馬は すぅ っとひとつ深呼吸をした。

「昨日のキスのこと、軽い気持ちでしたんじゃないから」

「え!?」


昨日のキスのことを思い出すだけで赤くなってしまう。
でも蔵馬はそんなのお構いなし。
なんだかいつもの余裕がないみたいな…



「会ったばかりでって思うかもしれないけど、が好きだ」


蔵馬の表情はまだこわばったまま。

好きって?

あたし…を?

!?」


へたり込んだあたしに慌てて手を差しのべる。


「うそぉ…」

やっと出た言葉はなんともまぬけ。


「嘘じゃないよ。君が好きなんだ」

「ホントに?」

「迷惑…?」

悲しげな瞳を見せられて、胸が締め付けられた。


「あたしね、夕べも言ったと思うけど…」


目には涙が浮かんできて、視界がぼやけ始める。


「蔵馬のそばがあたしの居場所だと思ったんだよ」


そうして、彼の胸に飛込んだ。

優しく抱きしめてくれる彼に、やっぱりここが自分の居場所だと確信した。


。俺と付き合ってくれる?」

「…うん!蔵馬大好き」


その言葉に蔵馬は目を細めて


「俺もが好きだ。住む世界は違っても、そのことで危険にさらされることになろうとも君がそばにいないことに耐えられそうにない」


蔵馬の唇があたしのそれと重なって

離れるとそっと耳元で囁かれる。


を危険に晒す気はさらさらないけどね」

だって。

「そろそろ時間だね」


蔵馬があたしから離れる。

寂しいなんて気持ちを感じとったのかあたしの手をとる。


がいてくれたら頑張れるよ」

「約束して?大会が終わったらデートしようね?」


あたしの願いに柔らかく微笑んだ蔵馬は素早く頬にキスをくれた。


〜〜fin〜〜