ここは幻海の寺。
七夕ということでみんなで集まって星を眺めようと言ったのは幽助だったか……
「……こうなると思ってましたよ」
一人仕事で遅れて駆け付けた蔵馬は部屋を見て呆れかえっていた。
部屋では星を見るどころかドンチャン騒ぎ。
幽助と桑原、コエンマは蔵馬を見付けるとさっそくアルコールの入ったグラスを押し付けた。
「ちょ…!待ってください!」
蔵馬の止める声が聞こえないのか、はたまたそんなことどうでもいいのか、群がる三人に少し引きながらグラスを手にとった。
「あれ…?女性陣はどうしたんです?」
部屋には酒をかっくらった男ばかり。
は先に来ているはずだし雪菜もぼたんも螢子もいるはずだ。
「あいつらなら外におるぞ」
「星なんか見たって腹はふくれねぇっつうの!」
「雪菜さんと星…お似合いです!!」
途中参加者には出来上がった酔っぱらいのテンションにはついていけない。
「俺も星を見てくるよ。ここだとよく見えるだろうしね」
もっともらしい理由。確かにここならば都会と違い星も綺麗だろう。
だが今の蔵馬は早くこの場から逃れたかったという方が強かった。
部屋を出て裏庭の方に進んでいく。
聞こえるのは虫の声だけ。
女性達がいるはずなのにいやに静かすぎる。
不審に思っていると向かっている方から幻海が歩いてきた。
「あぁ来たか。ならあっちにいるよ」
「師範はどちらへ?」
「蔵馬も逃げてきたんだろう?あいつら日が落ちる前からああなんだ」
そろそろ終わらせようと思ってさ、と拳を突き出す。
「そうですか。なら星を見にくるように言ってください」
意気込んで歩く幻海を見送って歩を進める。
「………」
声をかけようとして止めた。
も螢子も雪菜も、いつも盛り上げ役のぼたんでさえ黙りこんでいた。
満天の星空。
彼女達は呼吸をするのにも気を使ってるように音を立てない。
あまりの美しさに捕われているような。
蔵馬もしばし夜空を見上げていたが目線を下げた。
その先には。
月明かりに照らされたの横顔はとても綺麗で、儚く感じた。
「ちきしょー!ババアおもいっきり殴りやがって!」
ドスドスと荒々しい足音が近付く。
幻海が酒盛りを中止させたんだろう。
せっかくの静寂が破られ女性達は現実に戻された。
「あ!蔵馬」
が気付いて手を振る。
微笑みながらの隣へと移動する。
「蔵馬さん。お願い事書かれませんか?」
雪菜が短冊を手渡す。
「ゆっきなさ〜ん!俺にもくださ〜い」
やけに間延びした口調でデレデレした表情の桑原と大欠伸をするコエンマ、悪態つく幽助に雪菜は短冊を渡す。
「は何を書いたの?」
「あたし?あたしはね来年もまたみんなで星を見れますようにって書いた」
「らしいね」
優しく笑いながら蔵馬はさらさらと短冊に願い事を書いていく。
「何て書いたの?」
「ん?」
見たい?といたずらっこみたいな顔をする。
「あたしの願い事聞いたくせにずるい」
「はいはい、ほら」
手渡された短冊には綺麗な文字が並んでいた。
「あれま!やだよお二人さん〜仲がよろしいこと」
横から覗きこんだぼたんが冷やかすが蔵馬にはわからない。
「蔵馬、その願い事はここに結べば効果絶大じゃぞ」
コエンマがの手から短冊を奪い取りすでに結んでいる一枚の短冊の横に結わえる。
「なんなんですか?」
蔵馬が立ち上がり対になった短冊を手にとる。
「―――!」
驚きと、嬉しさ。
振り返って愛しい恋人を見れば彼女は僅かに頬を染め笑っている。
「この願いなら確かに効果は倍増だね」
だって同じ願いが二枚。
『ずっといつまでも蔵馬といられますように』
『ずっといつまでもといられますように』
〜〜fin〜〜