自分の前世が何者か、その答えがそこにある。
眞王廟に行けばすべてが分かる。

「どうしますか?」

寝起きにいきなり眞王廟からのご招待です。なんて言われてもねぇ…

「難しく考えることはないんですよ。ただそこの巫女、ウルリーケというんですが彼女が
会いたいと言われてて」

興味がないわけじゃないし行くのは構わないんだけど

「コンラッドも来てくれる?」

様子を窺ったら満面の笑みを浮かべていた。
朝食でユーリに出かけることを話したらついてくることになって、そうなると当然ヴォルフラムも来る
わけで。

「ギュンターも来るとは思わなかったよ」
「私は護衛です」
「俺だっているんだから心配することないんだが」
「みんな興味あるでしょ、あたしの前世に」
「そりゃな。どんな人物だったかとかいろいろとな」
「今があたしだよー?そんな大層な人物とは思えないけどな」

きっとがっかりさせそう。

「ここ?」

途中から徒歩になって日頃の運動不足が崇り着いた頃には一人だけ息が上がっていた。

「だから抱えてあげようかって言ったのに」
「いいのっ!」

途中から遅れだしたあたしにコンラッドからおぶりましょうか?と何度も言われてしまった。
意地で歩き通すあたしにじゃあ手だけでもなんて繋がれたんだけど。

「これは陛下、閣下ようこそ。そちらが殿下ですね」

門番の女性兵士がにこやかに入口を開けた。

「ここは普段男子禁制なんです。入るときは許可が必要なんですよ」
「へぇー。女の園ってわけだ」

もしコンラッドと喧嘩したらここに来よう。

「……なんだか良くないこと考えてません?」
「べっつに?」


言賜巫女の居る最奥へと通される間もコンラッドは手を離そうとしなかった。

「ウルリーケ様、お見えになられました」

開いた扉から覗いたのは同年代の男の子。

「む、村田!?来てたのか?」

ユーリが驚いて駆け寄る。

「猊下!」

ギュンターも慌てて寄った。

「ゲイカ?」

コンラッドが笑って説明してくれた。

「普通の人に見えるのに彼が大賢者なんだ」
「それを言うなら渋谷だって君だってそうだよ」

あたしは普通だと思うんだけど。お互いに挨拶を済ませムラケンは振り返った。

「彼女がウルリーケ。ああ見えて八百歳になるんだよ」
「うっそー!!」

紹介された巫女はどう見ても少女だった。

「はじめまして、様。ウルリーケと申します」

コンラッドを見ると何か分かったのか頷いた。

「見た目×5どころじゃないし…」
「今日は素敵な日ですわ!陛下に猊下、それに殿下、までいらっしゃるんですもの!」

ウルリーケは頬を染めて喜んだ。あたしたちはアイドルか…

「早速ですがウルリーケ。姫のことについてお話してもらえますか?」
「ええ。確か閣下には前にもお話した通り、様はかつてこの国の巫女でした。それも最高位の」
「「「ええー!!!」」」

あたしとユーリとヴォルフラムの声が響いた。

「最高位ってが!?」
「ユーリ程じゃないがもへなちょこだぞ」
「ちょっとヴォルフ?…まあ自分でもそう思うから強く出れないんだけど」
「大丈夫。は最高ですよ」

…何が?とは聞かないでおこう。
ムラケンがコンラッドに視線を向けてゆっくり下へと下ろす。止まった先はあたしたちの手。

「なるほど…」

なんだか納得されちゃいましたけど。

「じゃあって魔力使えるんだ?」
「ええ、こちらとの行き来も様の御意思で可能な筈です」
「嘘!?自分で来られるの!?」
「強い魔力の持ち主だったのですよ。それくらいは」
「どうしたらいいの!?魔力ってどう使うの!?」


コンラッドが握った手に力を込める。

「教えて!どうしたらここに帰って来れるの!?」
、大丈夫だから」

コンラッドが肩を掴んで宥める。

「落ち着いて。心配いらないから」
「コン……っ!」

コンラッドの胸に顔を寄せると優しく包まれた。

「…様がこちらに戻られた時、私も力を使いましたが貴女も魔力をお使いになられたんですよ」
「…ほんと…?」
「ええ。今は不安定かもしれませんが必ず御意思のままに使えます。…陛下に教わってみてはいかがでしょう?」
「げっ、俺?無理無理。人に教えられるなら苦労してないって」

ユーリが慌てて首を振る。

「渋谷、感じたことを教えてあげなよ」
「村田こそ教えてやればいいだろ」
「協力はするよ。彼女はこの国にとって大事な存在らしいって聞いたからね」

パチンとウインクして大賢者サマは笑った。

様。ここは貴女の家のようなものです。それに私たちの大先輩ですもの。
できればこちらにいらっしゃる時は眞王廟に居を構えてほしいですわ」

そう言うとウルリーケはコンラッドを見て笑った。

「そうして欲しいのはやまやまですがそうもいきませんわね、ウェラー卿」
「ああ。お断りするよ」

コンラッドも笑ってあたしの肩を優しく抱いた。
結局、自分の前世に関する話はそこで終わった。
今のあたしはであって言賜巫女じゃないし、関係ないから。
あたしはあたしのままだから。

「ねぇコンラッド」

眞王廟から帰る道程で相乗りしたコンラッドに訊ねてみた。

「あたし頑張って魔力使えるようにするね」
「それはまたどうして?」

分かってて言わせるのか。

「…コンラッドを一人にしないためだよ」

コンラッドは後ろにいるから顔は見えないけど笑ってるんだろうな。

「じゃあ俺も頑張ります」
「ん?何を?」
「あなたがこちらで寂しくないように、居場所をつくるのは俺だ」

コンラッドの唇があたしの耳に触れた。

「愛しています」

耳がこれ以上ないくらい熱くなった。



~~fin~~