『あたしのどこがいいの?』と、彼女はよく訊ねる。
その台詞を出す時の表情は笑顔でもはにかんだ顔でもなくて、いつも怪訝な顔。
今、この瞬間も好きなんだけどって答えるとますます顔をしかめる。
「?」
「わけわかんない」
疑わしそうに肩をすくめて彼女は後ろにもたれかかった。
「本当ですよ?」
彼女の人間座椅子となっているコンラッドはくすくすと笑いながら漆黒の髪を指に絡ませた。
「だってさ、」
「じゃあ、あなたは?」
「は?」
の言葉を遮って逆に問いかける。
「だから、俺のどこがいいの?」
「どこって……」
そう呟くと黙りこんでしまった。
「そんなに答えにくい?」
「ん?そうじゃないけど」
「じゃあどこが好き?」
「…全部?」
「…どうして疑問系?」
「さあ?」
その返事の何がおかしいのかコンラッドがくすくすと笑う。
彼の顔はちょうど肩口にあって、わざとかと思うほど吐息が首筋にかかる。
「やめてよ。くすぐったい」
「こういうところは?嫌い?」
言葉に詰まった彼女にまた笑う。
「こういうところは好いてくれるんだ?」
「………うるさい」
「じゃあ。こんな俺は?」
首筋に噛みつくように口付ける。
「ちょっ…!?」
「だってのここ、甘い匂いがする」
力が抜ける。全身が痺れる。
「…嫌い?」
わかってるのに訊くなんて、ずるい。
「これでも俺のこと好きだろう?」
「…その自信がむかつく」
「が態度に出してくれるから余裕に見えるだけだよ?」
「出てる?」
「幸せな気分です」
首を傾げる彼女を後ろからきつく抱きしめる。
「愛してる」
「知ってまーす」
照れ隠しか軽い口調のが愛しくて更に抱きしめた。
「俺の全部が好きなんですよね?」
「らしいね」
「それじゃあ」
彼女の前で組んだ手を少し上にずらす。
「どんなとこが嫌いなのか実験です」
「え!?」
シャツの釦をひとつずつ外していく。
「こら!コンラッド!?」
「ん?」
「なに?その楽しそうな声!つうか笑ってるでしょ!」
振り返り睨みつけたくても手の動きが気になってできない。
「嫌いなら止めるよ?」
「げっ!確信犯!?最悪っ」
「が悪いんですよ?誘うから」
「誘ってない!!勘違い!」
暴れた拍子にコンラッドの脇腹に肘が入り力が弛む。
「よし!」
「…やりますね」
逃げ出してガッツポーズ。
前を留めながら睨みつけると、それが何の意味も持たないとばかりの笑顔を返される。
「で?」
「あのねぇ」
「嫌いになった?」
だから、その余裕がむかつくんだって。
「俺はさっきみたいにに殴られても好きですよ」
「…ヘンターイ」
「に関しては認めてるから気にしません」
「いや。気にしてよ」
すっと、腕が伸ばされる。
「俺の全てが好きなら戻っておいで」
悔しそうに唇を噛みながらもが近づく。
腰を抱いて見上げた先の顔は赤く染まっていて
「またひとつ見つけました。を好きなところ」
恥ずかしそうに顔を背ける仕草が可愛くて愛しくて。
嫌いになる要素なんてないのだから。
「…コンラッドが」
「うん?」
尚も顔を背けたままでか細い声を出す。
「………好き」
「…………」
顔は赤いままで、でも瞳は強い光を放ちながらコンラッドの瞳を見つめる。
「………好きなとこしか知らない」
「うん。知ってる」
「……そっか」
嬉しそうにはにかんで、コンラッドの肩に手を置く。
「でも、セクハラは程々にしてよね?」
「さあ?」
「ちょっと?」
清ました顔で笑うコンラッドに眉を寄せる。
「しかたないだろう?が我慢させてくれないんだから」
「あたしのせい!?」
「ほとんどね」
「理不尽!!」
「おや、難しい言葉を知ってるんですね?」
「っ!なんてやなヤツ!!」
「でも好きなんですよねー?」
あまりに嬉しそうに笑うから膨れっ面が弛む。
しかたない。嫌いになるところなんて存在しないんだから。
でも調子に乗ってセクハラしないでくださーい!
〜〜fin〜〜