「まいりましたね」
外は雨。さっきまで晴れてたのに山の天気は変わりやすい。
みんなでピクニックに来たけれど散歩や昼寝で別行動していたところへいきなりの雨。
コンラッドが暖炉に火をつけ、振り返った。
「猟師が使う小屋のようですね」
「みんな大丈夫かな?」
「近くにはいると思いますが心配ですね」
「捜しに行こう!」
「いえ、逆に遭難しかねない。それにには無理だ」
「平気よ!」
「本当に?」
コンラッドがそう言った途端響く雷鳴。
「ひゃっ!」
小屋が揺れるような大きな音で思わず悲鳴を上げた。
「ほら、無理でしょう?」
「うぅっ」
こんな雷の中、みんなどこにいるんだろう?大丈夫かな?
「またっ!」
バリバリと鳴る雷に涙目になる。ああ、前にも似たことあったけど耐えられない。
「コンラッドー」
「ん?」
外を眺めていたコンラッドが振り向いた。
「ユーリたち、見えない?」
「ええ。どこかでしのいでいるといいんですが」
そうだ。小屋にいるだけでも良かったと思わなきゃ。
甘えてるなぁ。
「甘えていいんですよ。怖いんでしょう?」
見透かして笑うコンラッドに堪らず抱きついた。
「ユーリ、ピカピカしてるよ!綺麗だね!」
「つ、強いなグレタ…」
「怖くないのか?」
「えー?ヴォルフ怖いの?」
「なっ!違うっ!」
こちらは洞窟に避難していた。
「コンラッドたちは大丈夫かな?」
「あいつなら心配ない。泣くのはくらいだろう」
見上げた空はまだ機嫌を直しそうになかった。
「コンラッド?」
「ん?」
暖炉の前に座り、後ろから抱きしめられて少しは落ち着いた。
「落ちませんよ。大丈夫」
「ん……」
ただ、まだ止みそうにない雷に時折まだ体が震えるけれど。
「…可愛すぎると襲いますよ?」
「え!?だっ駄目!!」
「理性が持たないかもしれない」
「頑張ってよー!」
腕の力が強くなる。
「あのー、コンラッドさん?」
「わかってます。…陛下たちの無事もわからないのに自分だけ楽しむわけにもいきませんから」
「楽しむって、あのね……」
すっとコンラッドの腕の力が緩み顔を見上げれば少し険しい目が外に向けられていた。
「コンラッド?」
「……、少しの間一人で大丈夫ですか?」
「え?…うん」
「どこかで土砂崩れが起こったみたいです。陛下たちが心配だ」
「ええ!?大変。早く行ってあげないと」
一緒に行けたらいいのに。悔しいけどあたしじゃ足手まといだ。
「じゃあ、ここから出ないでくださいね?」
「うん。ちゃんと待ってるから」
雷光がコンラッドの姿を浮かび上がらせ、少しだけ目を閉じただけだったのに次に開けた時にはその姿はなかった。
「ユーリ!ヴォルフラム!!」
どんどん強くなる雨足。雨粒は容赦なく体に叩きつける。このまま立っているだけでも体力が奪われる。
僅かに聞こえた声。
「ユーリ?どこにいるんですか!?」
「コンラッドー」
周りを見渡すと洞窟の入口で手を振るユーリを見つけた。安堵と同時に今度は違う不安が襲う。
まだ止みそうにない雷に彼女が怯えているのだと思うと気が気でない。
説明もそこそこに三人を小屋へと急がせた。
「!」
乱暴に扉を開けると隅に座り込み頭を抱える彼女がいて、濡れるのも構わずに抱きしめた。
「コン…ラッド?おかえり」
「すいません…一人にして怖い思いをさせた…」
震える声が胸に刺さる。彼女が必要とする時にそばにいてやれなかった自分が情けなくて。
「コンラッド?大丈夫だったよ?」
「え?」
「だって戻ってくるの早かったもん。急いでくれたんでしょ?ありがと」
笑顔だけどその瞳には涙が浮かんでいて、そんな彼女が愛おしかった。
「なんだか静かになったね?」
外を覗き込んでいたグレタの後ろから空を見ればあんなに激しかった雨は弱まり雲間から光が差し始めた。
「では帰りましょうか。暖炉で暖まったとはいえ風邪でもひいたら大変です」
ユーリとヴォルフラムに手を引かれ、グレタがスキップする。
「さあ」
そう言って差し出したコンラッドの手をしっかり握って歩き出した。
「また来ようね?」
そう言ったら少し困った顔をしたから首を傾げて訊ねる。
「また雨に降られるかもしれませんよ?いいんですか?」
「いいよ?」
今度は不思議そうな顔をする。
「だってコンラッドがいてくれるでしょ?だから大丈夫なの」
自分で言っといて照れくさくてコンラッドの手を引いて走り出した。
「!危ないですって」
そんな声はもうちょっとだけ聞こえないふりをして。