眞魔国にバレンタインを広めたのはあたし。というかグレタとかアニシナさんとか数人にしか話してないのに城内、城下まで広まってるらしい。
まあこういう楽しいイベントならいいんじゃない?なんて余裕だったのは最初だけで。
「コンラッドがもてるって忘れてたよ………」
窓から見下ろした場所にはコンラッドとメイドさん。もう何度目撃したかわからないチョコを手渡す光景。
もてるのは結構。嫌な気分になる方がおかしいのか。こんなに心が狭いのは貰う数が半端じゃないからだね。
一体いくつ貰ってんの!?
一人が去ればまた一人。なんだかそれ以上見るのが嫌になってあたしもチョコを配ることにした。
「おおサンキュー!」
「が作ったのか?…大丈夫なのか?」
ユーリのように素直に喜べば良いものを三男は胡散臭げにラッピングしたチョコを見ている。
「大丈夫だよ!さっきグレタの食べたでしょ?と一緒に作ったんだから」
「そ、そうか」
「アニシナさんとは別に作ったから心配しないでよ。はい、これはギュンターに」
「あああありがとうございます!!!なんてもったいない。これは家宝にします!!」
「いや腐るから食べて欲しいな…」
こちらは過剰に喜びすぎ。最後は渋い顔でペンを動かす長兄に。
「うまくいったか?」
「おかげさまで。グウェンの教え方がうまいから失敗なくできたよ」
「それは良かった」
「先生には到底及びませんがお礼ということでお納めください」
「ああ。ありがたく頂く」
僅かに微笑んでまた書類に目を落とす。
そこへノックをして入ってきたのは
「おお!キングオブモテ男!」
「やめてくださいよ」
ユーリのからかいに苦笑してコンラッドはいくつかに分けた袋を持ち込んだ。
「コンラッド?何ソレ」
興味津々でグレタが近付く。
「これは陛下はじめみんなへのチョコレートですよ。この袋が陛下、こっちがヴォルフ、これはギュンター、最後にグウェン」
ぽかんとしたままの男性陣。いち早く正気に返ったのはユーリでその数を見て喜んでいる。
他の面々も満更ではない様子。
「コンラッドの分はー?」
「残念ながらないんだ」
「ええー!だってメイドさんとかコンラッドにあげるって言ってたのグレタ聞いたよ?」
「そうなんですか?でも俺は一個も持ってないんですよ」
そこで視線はこちらに向けられた。
「俺にはいつ貰えるんでしょうか?」
「……ホントに貰ってないの?」
「はい」
「あたし貰ってるの見たのに」
そう何度も。じゃああれはユーリたちの分?
「俺にはひとつで十分なので。…まさか俺にはないんですか?」
「ないって言ったらどうする?」
「えー!コンラッドのちゃんと大きいのつくっ…………」
グレタの口を押さえて微笑むと、それ以上に笑顔なコンラッドがいた。
「しかたないので大本命のチョコレートを頂きます」
「大本命?なに作ったの?」
「……なんのことだろう?作ったのは普通のチョコなんだけど」
「それじゃあ頂きます。じっくり部屋で」
「そういうオチ!?」
『俺が欲しいのはのチョコレートと彼女だから、たとえ義理でも受け取れないよ』
コンラッドが女の子たちに断わる時に言った台詞は魔王陛下の耳に入り、からかうネタとなり、でもいつか使ってみよう語録に登録されたのだとか。
「……そんな恥ずかしいことよく言ったね…」
「本当のことですから」
「そんなこと言ってホントは貰ってんじゃないの?」
「そういえばひとつだけ…」
「え!?」
冗談で言ってみたのに、何人ものチョコを断っておいて一体誰のを………
「グレタからのチョコレートをポケットに入れてたの忘れてました」
「もー!そんなんばっか!!」
「安心したでしょう?」
「…………」
あたしが欲しいのもコンラッドだけだよ。
コンラッドはあたしのもの。
だから他の子からのチョコはこれからも断ってね?
〜〜fin〜〜