本日の天気は雨。
「まぁあ―――!!!」
血盟城の庭へと続く廊下ではメイド長の叫び声が響いた。
「一体この雨の中で何をしたんです!?そんなに泥だらけになって!!」
彼女の前にはびしょ濡れの二人の少女。
「聞いているんですか!?さま!グレタさま!」
「「ごめんなさい!」」
メイド長は二人の姫付きのメイドで教育係まがいなこともしている、ようするに母代わりのようなもので二人とも彼女にはどこか逆らえない。
「まったくもう、せっかくフォンヴォルテール卿から頂いたお洋服が…」
「まあまあ。それより早く湯殿へ行かないと風邪をひくよ」
メイド長の後ろから爽やかに現れたのはウェラー卿。
「そうでした。さぁお二人とも、急いでくださいませ!」
とグレタは湯殿へと歩き出す。
「まったく…二人して何をしていたんだ?姿が見えないと捜していたんですよ」
と並んで歩くコンラッドは呆れながら尋ねた。
「あのねぇ猫さんがねー」
「グレタ!」
が制すると慌てて口を押さえるグレタ。
「…内緒…」
「グレタ、猫がどうした?秘密の場所で飼ってるのかな?」
「すごい!コンラッドどうしてわかったの!?」
グレタは瞳を輝かせてコンラッドを見上げ、は頭を押さえた。
「やっぱりそんなことだと思ったよ」
苦笑するコンラッド。
「猫くらい堂々と飼えばいいじゃないか。それに飼い主探しくらい皆喜んでやるよ」
「ホントに!?」
今度はが目を輝かせた。
「……なかなかそそる格好だね」
「ばっ……!///」
「ねーそそるってなにー?オトコ?」
「グレタはいいの!コンラッドも馬鹿なこと言わない!」
「はいはい」
湯殿が近付いてきた時グレタが言った。
「コンラッドも一緒に入る?」
もコンラッドもこれには固まった。
回復はコンラッドが早かったが。
「え?いいの?」
「よくないっ!」
嬉しそうなコンラッドに慌てる。拒否しないとこの男は本当に入りかねない。
広い湯殿ではグレタとの楽しそうな声が響く。
二人はまるで実の姉妹のように仲が良い。
「猫さんの飼い主探ししないとね!」
「そうだね。グウェンなんか喜んでもらってくれそうだけどなー」
二人のはしゃぎ声がいつまでも止みそうにないとコンラッドが声をかける。
「あんまり長湯だとのぼせますよー」
「ちょっと!覗いてないでしょうね!?」
「まさか。陛下の御息女がいらっしゃるのにそんなことしませんよ」
は少し考えた後恐る恐る尋ねた。
「普通は女性の入浴を覗くなんてしませんとか何とかって答えるんじゃない?それだとここにグレタがいなかったら入ってきそうな……」
「恋人の入浴を覗くのがいけないこととは思いませんから」
などとさらっと返した。
「やっぱりコンラッドも一緒に入れてあげればよかったよねー仲間外れで寂しいんだよ」
「グレタ!コンラッドに騙されちゃいけません。あの笑顔の下にはユーリよりも魔王らしい素顔が隠れて…」
「?入りますよ?」
「何でもないっ!」
温まった筈の体が急に冷えた気がしては湯船に頭まで潜った。
「ユーリ!」
嬉しそうにグレタが駆け寄る。
脱衣所から出るとユーリとコンラッドが談笑していた。
「ちゃんと暖まったか?よーし此処に座りな。髪の毛乾かそうなー」
ユーリがグレタの髪を乾かし始める。
「それ、あたしがやりたかったなー」
などとが呟いているとコンラッドに腕を掴まれ、あなたはこっちと椅子に座らされた。
コンラッドはタオルで髪の水分を丁寧にとり、櫛を通す。
「随分楽しかったみたいですね。こちらまで笑い声が聞こえました」
「うん、お風呂広いから泳いだり潜ったりシャボン玉したりね」
「そうですか」
嬉しそうなにつられコンラッドも笑顔になる。
「でもずるいです。グレタばっかり」
そっと呟いた言葉はタオルと髪の擦れる音が邪魔をして聞き取れなかった。
「え?なに?」
「俺とは入ってくれないんですか?」
「はぁ!?やだよ!」
「俺だって泳いだり潜ったりシャボン玉したり付き合えますよ。それにの髪も体も洗って差し上げますしもっともっと楽しくて気持ちのいいことだって…」
全部を口にする前にに遮られた。
「なに言ってんの!!馬鹿じゃない!?」
「えぇ馬鹿です。ね?認めますから俺と……」
「いや―――――!!!///」
が椅子から立ち上がるとその反動で後ろに引っくり返る。
ちょうど背もたれがコンラッドのみぞおちに入り小さくうめいた。
は奇声を上げながら部屋を飛び出して行った。
「なんだぁ?」
「どこか痛いのかな?」
少し離れていたため親子には会話が聞こえなかったようだ。
「コンラッド大丈夫ー?」
グレタの問いにいつもの爽やか笑顔で答えるとの後を追った。
「まぁいいか。よしグレタ続けるぞ」
「うん!」
親子はまた何事もなかったかのように続きを始めた。
グレタの髪が乾いてもとコンラッドが戻ってくることはなく椅子は倒れたままだった。
〜〜fin〜〜