血盟城から少しはずれた丘に登って、寝転ぶのが最近のお気に入り。
風が穏やかで、草や花の匂いがいっぱいで、目を閉じればすぐに眠ってしまう。
今日もみんなの目を盗んでやってきた。
「やっぱりここにいた」
目を開けると誰かが覗き込んでいた。逆光で顔が見えない。
でも不安になることはない。その人はそばにいて一番安心する人だから。
「黙って出たら心配します」
「ごめん。コンラッド」
寝転ぶ隣に腰を落として、ゆっくりと手を伸ばす。コンラッドが前髪に触れるたびくすぐったくて身をよじった。
「…こっち向いて」
「やだ」
「これ以上我慢させないでください」
そう言うと腰に手をやり、半ば強引に向きを変えさせられた。
反転した途端にアップになる彼の顔にまた元の体勢に戻ろうとするけどコンラッドの腕がそれをさせてくれない。
「ちょっとコンコン?」
「なんでしょう?」
コンラッドが上半身を捻って、逃げられないように両肩のところに手を置いて妖しく微笑む。
「俺はね、」
「な、なにかな?」
「禁断症状が出て困ってるんです」
「そりゃ大変。ゆっくり休んだほうがいいんじゃない」
「休んだくらいじゃ治まりませんよ」
「知らないっ。知らなーい!」
嬉しそうに顔を近づけるコンラッドと対照的に引きつる顔。
「こうすれば症状は治まるんです」
「コンっ…」
言葉も酸素も一緒に奪われる。角度を変えて何度も。
「…」
「んんっ?」
顔を曇らせているからまさか本当に具合が悪いんじゃないかと思った。
「治ると思っていたんですが」
「なに?」
「症状は悪化しました」
さっきまでの顔とは打って変わり笑顔になる。
「おかしな病気ですね。がいないと発症するからこうして近付くのに更に悪化するなんて」
さっきまでのキスの余韻で頭の回転が遅い。じゃなきゃコンラッドの嘘くさい笑顔が出た時点で逃げてる。
「自分でもどうかとは思うんですよ?我慢しようと努力もしたんです。でもがいるだけで狂ってしまうんです」
「それって、あたしのせい!?」
「狂わせたのは貴女だから、責任は取ってもらわないと」
体の下にコンラッドの腕が回され抱きあげられようとする。
「やだっ!人攫いー!!」
「そんな物騒なこと叫ばないでくださいね」
何の苦もなく抱えられ、その場を後にする。
どんなに暴れても腕の力は緩むことがなくて、ますます強くなった。
「今の俺の心の中が見せられるなら、すべてお見せするのに」
なんとも言いがたい顔になって笑うコンラッドにあたしもおとなしくする。
「がいないと苦しくて、求めても苦しくて、でも幸せで。どう表現していいのかわからない」
「コン?」
「この病気は一生治らないんでしょうね。嬉しいことに」
「いや、治ったほうがいいよ?」
「を愛している限り無理でしょうね」
あぁもう。くらくらする。甘い顔でそんな台詞吐かないでもらいたい。
「そんな顔をすると部屋に着くまで我慢できませんよ?」
「そんな怖いこと言わないでっ!」
慌てる姿を笑われてむくれるとそれも逆効果だったようで、また唇を奪われた。
「もお!誰かに見られたらどうすんの!?」
「見せ付ければいいんです」
「そんなプレイ好みません!」
またあたしが悪いと呟くから怒りたいけど、襲われないか心配で考えこんだ。
「のすべてが原因なんでどんなに考えても俺を止めるどころかひどくするだけですよ?」
「つまり、回避策はないってこと…?」
「あるわけないでしょう」
爽やか笑顔で答えられたはずなのに背筋が凍った。
逃げられない。もう、なにがあってもコンラッドからは逃げられない。
気分は小動物。一度ケモノに狙われたら、おしまいです。
「やだなあ、ケモノだなんて。その通りですが」
「………間違えた。ケダモノだったわ」
「それも間違いではありませんね」
「………………」
〜〜fin~〜