君の気持ちを疑っているわけじゃない。
君のことなら手にとるようにわかる。
だけど君は眩しすぎるから不安になるんだ。


俺でいいのか?と。




「で、シマロンの兵をグリ江の美脚で落としたってわけ」
「女装して潜入してたのー?バレたらどうすんの?」
「女装があ?バレないって。完璧だもの」


昨夜シマロンの偵察から戻ったヨザックに武勇伝をねだる。
俺はそれを見ていた。

彼女の笑顔を見ているだけで嬉しくて堪らない。
でも同時に苦しさも感じる。


愚かなんだ。
君が他の誰かに笑いかけていることに嫉妬している。


だからつい。


「ヨザ。そろそろグウェンに報告に行った方がいいんじゃないか?」

最もらしい理由で彼女から引き離そうとした。
だがそこは長年の付き合い。ヨザックはにやりと笑って立ち上がった。

「姫。隊長が拗ねてるからグリ江もう行くわね」
「余計なことを言うな」
「いやーん!こっわーい」
「コンラッド?やめなさい」

ヨザックを蹴りつけているとが俺の腕をとって止める。

「グリ江ちゃんをいじめたらダメ。怒るよ?」
「姫ありがとー。隊長のヘタレー」
「……殺す!」
「コンラッド!」


高笑いで逃げるヨザックを追いかけたかったがを怒らせるのは得策ではない。

こんなことくらいで一緒にいる時間をなくしたくないから。
がソファに座り俺に手招きする。
隣に座るとポットを手にしてお茶を注いでくれた。

「コンラッドがこのお茶好きだからちゃんと置いてあるんだよ?」

好きな茶葉の香りだがそれよりも

「の方が好きなんだけど」
「………バカ」


ポットを置いた彼女は僅かに頬を染めていた。

「そんなに照れることないでしょう」
「照れます!」

砂糖をカップに落として少し乱暴にスプーンで混ぜる。
その様子が愛しくて彼女の手に自分の手を重ねた。

「ゆっくり混ぜないとこぼしますよ」
「…自分でできるっ」

俺を睨みながら、といってもとても可愛らしいのだけど。

「そんな目で見つめたら誘ってるとしか思えないよ?」
「なんでそうなる!?」
「#がいれてくれたお茶もいいけど、俺はがいい」

ゆっくりと顔を近づけるとも目を閉じた。

触れるか触れないかの距離まで近づいた時だった。


「様!陛下を見ませんでしたか!?」
「きゃあ!?」

慌てて俺を突き飛ばし、その拍子にカップが倒れ中身がこぼれた。

「………ギュンター」
「あぁコンラート!陛下を隠してないでしょうね!?」
「………惜しい人物を亡くすことになるな」

腰の剣に手を伸ばすとギュンターも気付いたらしくサッと顔色を変えた。

「コンラート!落ち着きなさい!」
「これが落ち着けるか」
「コンラッド!ダメ!」

が背中から抱きしめるように止める。
その隙にギュンターは逃げだした。
ギュンターを追うのははっきり言って無駄だしとの時間を大事にしたい。

「もうちょっとだったのに、ね?」

未だ俺を抱きしめたままでがそう呟く。

「残念だった?」
「………うん…」
「素直だね」

振り返ると先程のように頬を染めたがいた。

「片付けないと」

こぼしたお茶を片付けようと離れようとするから手首を掴んで引き寄せた。

「絨毯に溢れたらシミになっちゃう」
「大丈夫」
「何が大丈夫なのよ…」

絨毯なんかどうでもよかった。
を片時も離したくなくて更に力強く抱きしめる。


「!!匿ってくれ!」


荒々しく扉を開けて飛び込んで来たのはユーリだった。

「………」

名残惜しくから手を離し入口に振り返ると扉に背を預け肩で息をするユーリがいた。

「ギュンターですか?」
「みんなだよ!ギュンターもヴォルフもアニシナさんも……ったく」
「はい。お水」
「あ、サンキュー」

一気に水を飲み干してユーリが申し訳なさそうな顔をした。

「もしかして、邪魔した?」
「いいえ?」
「………邪魔だったんだな…」
「もういいって。ね?コンラッド」
「いいって?」
「こんな日もあるってこと」

諦めたように笑ってカップを片付け始めた。

「すぐ出てくから」
「気にしないで?」
「いや、でもコンラッドが………」
「俺ですか?やだなあ大丈夫ですよ」


あぁ。大丈夫。ちゃんと仕返しは考えてあるから。
「コンラッド。顔が悪役っぽいぞ」
「すいません。今ちょっと悪役っぽいことを考えていたので」
「爽やかに言うことじゃないと思うな……」


ドンドンドン!


複数の扉を叩く音がした。

「ユーリ!ここにいるんだろう!?」
「陛下ぁ!どうして逃げるんですかぁ!?」
「陛下!新しい発明品のもにたあになってください!!」

扉を壊しかねないので鍵を開けると騒がしく飛び込んで来た。

「ユーリ!この尻軽!の部屋などに逃げ込むとは!!」
「追いかけてくるからだろ!!」


「陛下!お勉強の時間です!!」
「もう今日は嫌ってほどやっただろ!?」
「私のことならお気になさらず!今日一日を陛下の為に使っても全くかまいません!」
「俺が嫌だっつーの!」


「さ、陛下。これをかぶって地球のことを考えてください」
「まだ地球のデータとるの諦めてないの!?これこないだ爆発したんじゃ…」
「大丈夫!改良に改良を重ねましたから!さあさあさあ」
「いや、遠慮しとくよ」


ぎゃあぎゃあと思い思いに話す連中に俺も堪忍袋の緒が切れそうだった。

「お前たち。そろそろ黙る気はないか?」


主の手前怒りを抑えて言ったつもりだがおさまる気配すらない。
これは実力行使かな?

「みんなで邪魔して…。もう許してあげないからね」

低く呟いたその声は何故かどの声よりも通った。

「コンラッド。やっておしまい」
「…それ悪役の台詞…ってコンラッド!?」
「のお許しも出たことですし、覚悟はいいですね?」
「コンラッド。お茶用意して待ってるね」
「すぐ終わらせます」

今日何度もに剣を抜くのを止められたが漸く力いっぱいふるっていいのか。

そう思うと自然と笑みがこぼれた。


「さあ。いきますよ?」
散々に逃げ出した輩を少しだけ追いかけて脅し、漸く静かになった部屋へ戻って鍵をかけた。

「お待たせしました……?」


ソファでは疲れたのか横になってすやすや眠るがいた。

「………最後の最後でからお預けですか…」

崩れ落ちそうな気分だが

「可愛いからいいか」

そっと口づけて隣に座った。

が起きたら続きをすればいい。
もう邪魔は入らないだろうから。


瞼を閉じると彼女に誘われるように眠りに落ちていった。



〜〜fin〜〜